溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
『俺は覚えてる。一番頑張ってたお前が、影で一番泣いていたのも覚えてる』
『は。そうやって格好良いこと言うからモテて、彼女と喧嘩すんのよ』
『でも、ずっと俺が好きだったろ』
『――!?』
甲斐は、テーブルに頭を何度も何度もぶつけると、真っ赤になった額ごと私の方へ向き直った。
『気づいてたけど、彼女を傷つけるのが怖くて、ずっと知らないふりして七帆を傷つけてきたけど』
真っ直ぐな目、逸らせない。
甲斐の目は、情熱的で熱くて、――優しいの。
『もう、俺もお前と幸せになりたい』
伸びてきた手は、私のジョッキを奪うとテーブルへ優しく置く。
代わりに、酔っぱらって温かい甲斐の手が私の指に絡みついてくる。