溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
四、三日目。加速する気持ち。
朝、心地よい温もりを感じて起きた。
いつの間にか、ジェイドさんがツインのこの狭いベットに侵入していたようだ。
重たい右手を私の身体の上に、寝返りと同時に置いてきたので撥ね退けて起きる。
昨日は叫んだけれど、今日は何も感情が湧きあがって来なかった。
強いて言うならば、この人は私のベットに侵入してきても、自分からは何もしないと思うという安心感というか虚無感ぐらいだ。
本当の相手は、私ではないから。
気持ちよさそうに眠る彼が幼く見えるのは、吸い込まれそうな深い翡翠色の瞳が長い睫毛に隠れ、褐色の肌と小さく口を開けた子供みたいな表情がアンバランスだからか。
まだ知りあって三日目の私の隣で、こんなに爆睡できるのも珍しい。
のそのそと起きて、ケイリ―さんに飲み物をお願いして、バルコニーの椅子で二度寝した。
昨日のジャットコースターみたいなドキドキの連続の夢から覚めたみたいだ。
指先に輝く指輪が、朝日に反射してキラキラと美しいのに、
私の気持ちは、立場は、イミテーションだから所詮本物の輝きには叶わなかった。