溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~

「ふむ。ナホは優し過ぎるからな。やはり一度会ってからではないと判断できないな」
「それがいいと思います」
だから、早くまた泳いで下さい。あまり、直視できないから泳いでいて欲しい。

7日間、ずっと隣に居たら私、本当に脳が勝手にジェイドさんを恋人だと認識してしまいそうで怖い。
距離を開けたいの。出来れば、泳ぐジェイドさんを私はジュースを飲みながら眺めるぐらいの、距離ぐらい。

なのにこの指輪が、私とジェイドさんを引き寄せるマグネットの役目を果たしていて――怖くなる。

『サクラ』

甘く名前を呼ぶ、昨日の夜の声が心に響いた気がした。

駄目だ。声がする。
私じゃない名前を呼ぶ、声。

所詮、私は偽物なんだ。ジェイドさんも甲斐にも。

所詮、一番にはなれない、偽物。

「ナホ、一緒に泳がないか?」

ぼーっとしておる私をこんなにも気を使ってくれているのに、私の心はもやもやしたままだった。
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