溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
「ナホ?」
「ごめん。なんかちょっと時差ボケかも。部屋で寝ときたい」
「大丈夫か? だから朝から元気がなかったのか」
元気が無かったこともお見通しとは。なんだか優し過ぎて涙が出そうだ。
「大丈夫。ケイリーさんに頭痛薬でも貰って大人しく寝とくから。せっかくなんだからもうちょっと泳いでて」
せっかく水着姿も褒めてくれたし、可愛いのを買って貰ったのに、7日間だけでも忘れようと頑張ったのに。
無理だった私の幼い心が恥ずかしい。
別に恋人でも、本当の婚約者でもないのに。
なのに、代わりにされる私の存在がちっぽけで。
優しくされても満たされなかった。
シャワーを浴びようと、蛇口を捻っても冷たい水しか出て来なくて。
頭が冷えるまで、私はずっと頭から冷水を被っていた。
――なかなか冷えてくれない。