溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
「ごめんね。きっと私、熱で正常な考えが出来ていない。でも、私、ジェイドさんの優しさが辛い。ジェイドさんにとっては、客船の皆へ言いわけしてしまった、嘘の婚約者だもん。優しくしないと、嘘だとバレちゃうもんね。優しくされるのは、契約だもん。でも辛い」
両手で顔を覆い隠しながら、涙ごと自分の心を隠した。
本当は優しくされて、嬉しいのに不満しか口から出て来ないように。
やっぱり私は可愛くない奴だ。
「ナホ。俺がキミに優しくするのは、当然の事で――女性に紳士的に尽くすのは至極当然のことだよ」
「誰にでも優しくすると、本当に大切な人が出来た時、ジェイドさんが困るよ。女の子は、自分を特別に扱ってくれる方が嬉しいんだから」
「ナホ――」
「ごめんなさい。私、恋愛経験が無いから、ジェイドさんの何気ない優しさとか言葉とか、ドキドキしたり甲斐と比べてしまったり辛い」