溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
今度は必ず、後悔しないようにしよう。
流されてこんな甘い雰囲気の中、まるで恋をしているかのような錯覚が起きないように。
素朴でもすぐ隣にあるような恋を大切にしていこう。
恋が出来たら、の話だけどね。
まともな思考回路ではない頭でぐるぐる考えていたら、眠っている部屋のドアがノックされた。
部屋に静かに響き渡るその音に、ジェイドさんが帰って来たんだと少しだけ安心した。
「入っていいかな?」
「はい」
ぼうっとする意識の中、かすれた情けない声でそう言う。
「起こしてしまったらすまない。ただ、これを」
畏まって佇んでいるジェイドさんは、後ろ手に何か隠しながら部屋に入って来た。
それを、少しだけ迷った顔でサイドテーブルへ置いた。
「何、ソレ?」
「キミを傷つけたくはない。だが、俺はやはり熱でうなされているキミを一人にしたくないんだ。キミに優しくしたいのは、見返りなんて要らない、俺の自己満足だが譲れない。すまない」