溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
24歳にもなって、それはないだろって引かれるとは思ったけれど。
「あのね、甲斐。私、処女なの!」
「へ?」
Yシャツを脱いだ後、中に着ていたタンクトップを豪快に脱いでいた甲斐。
今にも覆いかぶさろうと私の肩に手を伸ばしていた時だった。
「え、まじで?」
甲斐は、驚くと少し身体を起こす。
私は覚悟を決めたように、少し恥ずかしげに俯くと頷いた。
恥ずかしい。けど、ずっと甲斐の相談役ばかりでそんな恋愛に進む事がなかったんだもん。
だから分からない。
ムードだって、なんか甘くて逃げ出したくなるし。
キスの先なんて――想像できないよ。
「うわ」
そうだよね。この年で処女とか、面倒くさいよね。
「嬉しい」
でも、甲斐から帰ってきた言葉は意外なものだった。
「俺の為に取っててくれたんだろ」
何をキザな事をと、睨みつけようとしたら甲斐は真っ赤な顔で、耳まで真っ赤で。
蕩けるように笑ってくれた。
だから、緊張していた私は覚悟を決めて目を閉じたのに。
甲斐なら、幸せになれるって思ったのに。