大阪セカンドシンデレラ
私は智君の車椅子を押しながら、ゆっくりと通天閣に向かって歩いて行った。
通天閣の周辺地域は新世界と呼ばれていて、串カツ屋や飲み屋、お好み焼き屋等、たくさんの店が軒を連ねている。
それぞれの店に観光客が集い、その観光客を呼び込むお兄ちゃん達が声を出し合い、平日でも大変賑わっていた。
「僕、通天閣の真下まで来るの、初めてや。」
活気溢れる新世界を目を輝かせながら見つめる智君を見て、私も心から嬉しさが込み上げた。
「着いたで。」
智君を連れて来た場所。
それはゆかちゃんのたこ焼き屋だった。
ゆかちゃんはカウンターの中から私と智君を見るなり感心しながら言い放った。
「へぇ~、美紀の恋した相手ってこんな可愛い子やったんや。」
「違うって!」
即座に否定した私を智君は振り返って見上げる。
「美紀ちゃん、やっぱり恋してたんや。」
「…。」
反論出来ず、黙ったまま店の中に車椅子を押して行く。
幸いにも店内にはお客様はおらず、ゆかちゃんが即座に椅子を移動させて車椅子スペースを作ってくれたので、智君とゆっくりテーブル席で向かい合う事が出来た。
着席した途端、ゆかちゃんは智君の顔を覗き込む。