大阪セカンドシンデレラ
「で、何しに来たんや?」
夕方に近づき、部活帰りの高校生や韓国人らしき観光客が店内を支配する頃、ゆかちゃんの店のカウンター席でうな垂れていた。
「だって、上手く描けないんだもん。」
「ここに来たって解決せんやろ。」
どこまでも素っ気ないゆかちゃん。
「まぁ、ええわ。腹が減っては戦は出来ひんからな。」
食べて欲しそうなたこ焼き8兄弟が仲良くトレーに乗って私の前に差し出される。
素っ気ないけどとっても優しいゆかちゃん。
「智君は元気か?」
先日連れて来た智君とすっかり意気投合していた。
「元気やで。」
「智君はどこが悪いんや?」
「心臓が悪いとは聞いた事が有るけど…。」
「そうか。」
「物心ついた時から車椅子生活で、きっと不便で辛い思いしているはずやのにいつも明るく振る舞ってる。」
「偉いよな。」
「うん、偉い。智君は私の何十倍も偉い。」
たこ焼きを1つ頬張る。
「なんか最近調子が良いみたいで遠出する許可が出たらしいねん。私に大阪の色んな所連れて行って欲しいってお願いされたわ。」
「どこでも連れて行ってやり。それで病気が完全に治ったらええのにな。」
ちょうど別のお客様に呼ばれたので、ゆかちゃんはカウンターの中から出て行った。
「私が連れ出す事で智君の病気が良くなるのなら、ホンマにええのにな。」