大阪セカンドシンデレラ



「さ、先生、席が空きましたよ。」



「どうぞ、座って下さい。」



「いえいえ、私はすぐに降りますから大丈夫です。」



「降りるまでどうぞ座っていて下さい。」



丁寧に断る先生を半ば無理矢理座らせようとする“しもべ”。


先生もそれでは、と言って、席に向かって歩き出した。


優先座席の空いた席に行くには、私と智君の脇を通らなければならない。


先生がゆっくりと席に近づこうとした時、電車が急に減速をした。


思わず体勢を崩して先生が倒れ掛かる。


倒れ掛かった先にいたのが智君だった。



「先生、大丈夫ですか!」



「全く、下手な運転して。先生に何かあったらどうすんねん。JRに苦情言わなアカンわ。」



しもべ達がバランスを崩した先生に近寄り抱きかかえようとする。


先生は腰の辺りを押させながら苦悶の表情を見せている。



「先生、どうされたのですか?」



「ちょ、ちょっと腰の辺りを打ち付けたようで…。」



右の腰の辺りを手で押さえているのだが、どうやら智君の車椅子の車輪部分が“うまく”腰にフィットしたらしい。



「先生、さ、座りましょ。」



2人で先生を席に座らせると、先程と同じようにコソコソと聞こえるように話し始めた。


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