大阪セカンドシンデレラ
「お腹減ったんとちゃう?」
のんびりと、公園の中を車椅子を押しながら智君に尋ねる。
「大丈夫。それより…。」
「どした?」
「今日はありがとう。美紀ちゃんと大阪城に来れて良かったわ。」
出て来たばかりの大阪城を見上げながら智君は言う。
「う、うん。」
「さ、帰ろか。」
「えっ!?」
ちょっと驚きながら車椅子を止める。
「もうエエの?折角の機会やから、梅田とか海遊館とか、智君が行きたい所どこでも連れて行こうと思ってたのに。」
智君は振り返るとにっこりと微笑んだ。
「僕の為に時間もお金も美紀ちゃんに使わせる訳にはいかへんし。」
「そんなんどうでもエエよ。」
「良くない。僕は十分。大阪城の美しさが見れただけで十分。」
「智君、もしかして…。」
体調が悪くなったのかと思った。
心配そうな顔に変わった私に気付いたのか、ニコニコ話し続ける。
「僕は元気。今日はホンマに連れて来てくれてありがとう。一緒に居てくれてありがとう。楽しませてくれてありがとう。」
『なんぼ体の調子が良いからって、元々心臓が悪いんやろ?あまり無理に連れ回したらアカンで。』
ゆかちゃんの言う通りやし、智君も楽しかったと言ってくれるなら…。
「分かった。じゃあ、大阪城公園一周してから電車の乗ろか?」