大阪セカンドシンデレラ
7、願いの涙
智君の母親が去った後も私はベンチから離れる事が出来なかった。
陽は傾き、辺りは薄暗くなっている。
先程までの会話…。
「美紀さん。」
「はい。」
「実は…。」
智君の母親は見せる笑顔とは裏腹に衝撃的な言葉を伝えてきた。
「智樹が入院したんです。」
「えっ?」
「昨日です。体調が悪くなって、自分で動けなくなって…。」
「そんな…。」
頭が真っ白になる。
『あのな、先日病院に行ったらな、かなり体の調子が良好って言われてん。』
『でな、先生が今の体調なら半日ぐらい出掛けても大丈夫でしょうって言ってくれてん。』
「智君…。」
次第に悲しみと怒りが込み上げてくる。
「私が…、私が…。」
無理させたからだ。
大阪城に連れて行ったからだ。
もっと違うやり方があったのではないかと自分自身に怒りが込み上げてくる。
「でも、それは決して美紀さんと出掛けたからではないんです。」
智君の母親は私の肩に手を置いて優しく話しかけてくれる。