大阪セカンドシンデレラ



「智樹は本当に嬉しかったんです。美紀さんに大阪城に連れて行ってもらった事が本当に嬉しかったんです。」



『実際に見たの初めてや。こんなにも、こんなにも綺麗なんて…。』



目を輝かせて。


その美しさに惹かれて。


自分の手で、その手で大阪城を掴もうとした智君…。



「帰って来てから、ずっとずっと大阪城の話をしてくれました。次の日も、その次の日も話していました。お母さんも一緒に見に行こうって言ってくれました。」



「…。」



「これは私の推測ですけど…。」



智君の母親は座り直して少し目を伏せる。



「智樹は分かっていたんだと思います。」



「何、を…。」



「次、体調が悪くなったら、もう外へは出れないのだろうと。」



「…。」



「だから、これが最後のチャンスだと思って。最後の時間を大好きな美紀さんと一緒に…。」



それ以上は聞けなかった。


聞く事が出来なかった。


涙を止める事が出来なかった。



『僕は元気。今日はホンマに連れて来てくれてありがとう。一緒に居てくれてありがとう。楽しませてくれてありがとう。』



ゴメンね、ゴメンね、智君…。


私…、何もしてあげられなかった。


智君の為に何もしてあげられなかった…。



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