大阪セカンドシンデレラ
入場ゲートへの列から外れて、16階にある美術館の脇で新太郎さんと並んで壁にもたれる。
「美紀ちゃんはどうしてハルカスに?」
尋ねてくる新太郎さんに入場券を見せた。
「これを貰ったから、展望台に昇ろうと思って…。」
「それって、智君から貰ったんだよね?」
その名前を聞いて、私は目を見開いた。
「どうして智君を…。」
私のチケットを覗いて日時と時間を確認すると、新太郎さんはポケットから自分が持っている入場券を差し出した。
「僕も智君から貰ったんだ。」
相変わらずニコニコと話しかけてくる。
「新太郎さんって…、智君と知り合いだったんですか?」
その問いかけに新太郎さんは目線を私から目の前の行列に切り替えて答えた。
「3、4ヶ月ほど前かな?美紀ちゃんと知り合ってからなんだけど。」
「3、4ヶ月前…。」
「ああ。美紀ちゃんが絵を描いているいつもの公園に、妹のお見舞いの合間に訪れたんだ。その時に何気なく通天閣を眺めていたら声を掛けられてね。『通天閣が好きなんですか?』って。びっくりして振り向いたら、車椅子に乗った少年が嬉しそうにしていてね。僕も嬉しくなって、好きなんだ、って答えたんだ。それが最初の会話だったかな。」