大阪セカンドシンデレラ
9、たこ焼き



日曜日、午前11時。


新世界界隈は沢山の人で賑わっており、その中心にある通天閣では入場するお客様の列がかなり長くなっていた。


活気ある新世界の中を、私は1人寂しく歩く。



『ごめんなさい!』



『美紀ちゃん!』



新太郎さんの呼び止める声を聞かず、あべのハルカスを飛び出した。


握り締めたままの日時指定券。


私は智君の思いよりも新太郎さんの思いを優先した。


いや、智君の思いではなく、自分の思いかもしれない。


これでいいんだ…。


通天閣の脇を過ぎ、無意識にある店の前に立っていた。


ゆかちゃんのたこ焼き屋。


既に営業を始めており、グループ客が2組ほど、テーブル席に座っている。


カウンターの中のゆかちゃんは左手を腰に当てて、目線を落とし慣れた手付きでたこ焼きを回していた。



「ゆかちゃん…。」



小さく呟くと、聞こえたのか偶然なのか、ゆかちゃんが顔を上げた。



「あれ?美紀やん?」



少し驚いた顔をしている。


そうだろう。


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