大阪セカンドシンデレラ
「新太郎さんに折角だから展望台に昇ろうって言われた。」
「昇ったらエエやん。」
「昇れんかった。」
「何でや?」
「…。」
視線を落とし、メロンソーダをストローで吸い上げる。
すっかり炭酸が無くなり、甘い砂糖水になっている。
「新太郎さんとは私がいつも絵を描いている公園で出会ってん。初めて会った時からドキドキした。通天閣が一番好きって事も同じだったから余計に嬉しかった。」
「…。」
「でもね、新太郎さんは京都に住んでいて、公園に来る目的は近くの病院で入院している妹さんのお見舞いの為やねん。」
「…。」
「ある時、新太郎さんがあべのハルカスを眺めながら呟いた言葉があるんだ。妹をあべのハルカスに連れて行ってやりたいって…。それを聞いた時、新太郎さんには入院している妹さんが一番大事なんだな、と。私はナンバーワンでもオンリーワンでもないな、って。だから、妹さんとあべのハルカスに行くまでは、私は行ったら駄目だな、っ…。」
言葉の途中でいきなり胸ぐらを掴まれた。
顔を上げると、ゆかちゃんが今まで見せた事無いような形相で睨みつけている。
「見損なったわ!」
言い捨てると、思い切り胸ぐらを離された。
怒った顔のまま、たこ焼きを焼き始める。