大阪セカンドシンデレラ
「そうだよね…。」
私は小さなため息と共に心の本音を呟いた。
いつもの公園のベンチ。
色鉛筆を脇に置いて、スケッチブックに目の前の通天閣を描きとめる。
コンテストで金賞を受賞した事は自分にとって自信になったのだが、心に大きな穴が開いてしまって、絵を描く事に集中出来なくなっていた。
原因は分かっている。
麻衣ちゃんが退院した事で新太郎さんがこの公園に来る事が無くなかったからだ。
「もう会えないのかな…。」
その思いが日に日に大きくなっていく。
さらに、智君が入院している事も私を苦しめた。
「智君が私を救ってくれていたんだよね…。」
今更ながらに思う、ありがたい気持ち。
『実際に見たの初めてや。こんなにも、こんなにも綺麗なんて…。』
大阪城を見た時の智君の横顔は今でもはっきりと覚えている。
輝いていた横顔を。
「智君、そろそろ退院してふらっとやって来ないかなぁ。」
新太郎さんへの麻衣ちゃんが退院した事の喜びと会えない不安。
智君が傍にいない悲しさ。
さまざまな思いで心が潰されそうになったので、思い切ってスケッチブックを勢いよく閉じた。
「今日のような気分じゃ、素敵な絵なんて描けない!」
ゆかちゃんのお店に行こうかとも思った時、携帯が鳴り響いた。
「新太郎さん…。」