Bloody Castle
まだ何も言ってないのに、女の子は楽しそうに話し出した。
「私、『アフロディーテ』。本名は姫島 紅華(ひめしま べにか)。君と同じ中学一年生!呼ぶのは何でもいいよ♪」
ニコニコと笑うその顔は、妖精みたい。漫画だったら周囲にぽわぽわと花が舞ってそうだ。
こんなに可愛い娘が、自分の願いを叶えるために、ブラッディキャッスルに入ってるなんて……そうは見えないな。
「最初に、君の部屋を案内しないとね♪」
「部屋?」
「掃滅の仕方によっては、一時的に泊まる時もあるからね。その時に使う場所。藍亜ちゃんの部屋はこっち!私の隣!」
手を引かれて、明るさ控えめの小さなシャンデリアが並ぶ廊下を連れられる。
壁には薄緑ベースの薔薇の花の模様。時々通りすぎるドアには、美しくもどこか哀しげな悪魔の絵が彫られていた。
「じゃじゃーん!ここがアイちゃんの部屋でーす!」
……いきなりアダ名で呼ばれた。まぁいいけど。
じゃ、私もベニちゃんって呼ぼうかな。
ベニちゃんは両手を広げて、部屋の中を見せてくれた。
一番廊下の奥の、この角部屋が、私の部屋らしい。
「ね、ね、開けてみて!中はすっごい綺麗だから!」
ベニちゃんにせっつかれ、金色のS字型のドアノブを握って開けた。
部屋に入ると、すぐに玄関の天井に下がったキラキラしたモビールのようなものが出迎えた。
奥の方は、高級ホテルのような豪華なインテリアが揃っている。
「ん?」
インテリアだけじゃない。誰かいる。
フワンとしたまるっこいオカッパ頭に、首に巻いたクリーム色の長いマフラー、子供らしくない何もかも諦めたようなトロンとした目で箒を持つ、幼稚園生くらいの女の子だった。
「お掃除は済ませておきました。私は退きますので、後はお二人でごゆっくりお過ごしくださいまし」
「ありがとー!」
ベニちゃんが満面の笑顔で礼を言うと、女の子は一礼してから部屋を出た。
「あの娘も、ここの住人なの?」
「あぁ、亜麻(あま)の事?違うよ。あの娘は単なる使用人みたいな、お手伝いさんみたいな、そんな感じのユーレイ!」
「へぇー、そ~なんだ……ユーレイっ?!」
ユーレイって、幽霊?!
びっくりして隣にいるベニちゃんを見ると、何でも無いような顔で微笑んでた。
「うん、なんかね、数年前に、特に叶えたい願いも無ければ掃滅もしたがらずに、ここで働きたいって来たんだって。ヘラ様が言ってた。
生前の記憶が無いみたいだし、ユーレイなのに触れたり物持てたりするから、雇ったらしいよ」
「へー……」
「さ、次は魔器の調達に行くよ!」
「え?魔器って何?」
「掃滅するときに使う、魔力たっぷりの武器のことだよ!あたしは弓を使ってんの!早く行こ!」
「え、ちょ、わああっ?!」