怪盗ダイアモンド
ぅぉぉおおおおおいっ!?
テヘッじゃねーよ!!
いきなり?!
初仕事なんだから余計なことすんなよ!
ひどい親だな!
普通、そこまでしっかりしてないいつも通りの警備の方が取りやすいに決まってるのに!
心の中で憤慨する私。
私は頭の中に「獅子の子落とし」という言葉を浮かべた。
「アゲハ嬢?なにしてんの?」
「もー、早く行こーよ!」
スマホを握り締めて、怒りでぷるぷる震えてる私を振り返り、声をかける阿弓と亜希乃。
「い、今行く……」
「おーっ!」
「おぉー!!」
「おおおー!!!」
血の口紅(ブラッドルージュ)が埋め込まれたブローチが置かれている広い展示場に入ると、まず私たち三人は感嘆の声を上げた。
私はお目当ての、中央のケースに入った立派な宝石と、近くに設置された厳重そうな防犯装置に。
阿弓はブローチと、それを美しく見せるためにあちこちに施された、展示場の飾りつけと防犯装置に。
亜希乃はブローチと、イケメンな警備員さんに。
見事な同床異夢。
私達っていつも意見や考え方がバラバラなのに一緒にいるんだよね。
……だとしても同じ景色を見てるはずなのに、何なんだろう、この差は……
それにしても、本当に美しい宝石。妖しい輝きを放つその紅い宝石は、近くに寄らなくても魅力が分かる。
「アホ、館内では静かにしろ」
後ろから大きな手が、亜希乃の脳天をチョップした。
「いてっ……あ、ダディ!」
亜希乃のお父さん、須永 庄太郎(すなが しょうたろう)警部だ。
「特別に入れてやったんだ。感謝しろよ。問題起こしたら即退場だからな」
「うん、ありがとダディ〜
マジで感謝!謝謝、Thank you、Merci、カムサハムニダ、にゃんにゃん!」
「最後意味不明だぞ亜希乃……」
亜希乃パパへのお礼もそこそこに、私達は他の展示物も見て回ることにした。
この展示場は筒のように円く作られていて、展示品を見ながらスムーズに周ることができる。
私は他の展示されてるアクセサリーを見つつ、防犯装置をチェック。
阿弓は飾り付けと、何故か私同様また防犯装置。
亜希乃は展示品も防犯装置も見ずに、イケメン警備員ウォッチング。
またもや同床異夢……