怪盗ダイアモンド
「え?」
明らかに夕璃の声じゃない声が、カウントの最後を飾った。
バチン
その瞬間、展示室の照明がすべて消える。
「何?!何?!」
「怪盗が出たぞー!!」
「ラミちゃーん、どこー?!」
「いったーい!誰よ、アタシの足踏んだの?!」
一気にざわざわとざわめく展示場。
「おい、コトノ!!『血の口紅(ブラッドルージュ)』は無事?!」
一般客に紛れながら、一緒に宝石の警護をしていたTGGメンバーの一人のコトノ、本名、田宮 琴乃(たみや ことの)に叫んだ。
「くっ、暗くて何にも見えないよっ!」
「暗視ゴーグルくらい付けとけよ、アホ!」
ったく、この手の仕事は初めてだからか、皆慣れなくて何が必要なのか分かってない……
仕方なく、暗視仕様のゴーグル風眼鏡をかけてて周囲が見える私が警備員たちの方へ行こうとした時―――……
カン!
「うっ!?」
何だ?!
急に展示品の所だけにスポットライトが当てられ、ケースの上に乗った人影だけを照らす。
「Bonsoir(こんばんは)!予告通り、『血の口紅(ブラッドルージュ)』は、私の手中に収めさせて頂きましたよ」
「か、……」
「怪盗ダイアモンド!!」
私が言い切る前に、須永警部が叫んだ。