怪盗ダイアモンド

★IT'S SHOWTIME！

★



母さんがブレーカーと防犯装置の電源をを落とすタイミングに合わせて、私は天井から降りた。

予告した時間の十分ほど前から、埃っぽい天井裏に忍者みたいに隠れてたから、なんだか開放感がある。

手元のスイッチを押し、ケースの上だけライトを照らす。

私の姿が現れた瞬間、歓声と悲鳴と奇声が飛び交い、ギャラリーが一気に賑やかになる。

ふふふ。面白いくらい計画通りに行くなぁ。

「Bonsoir(こんばんは)！予告通り、『血の口紅(ブラッドルージュ)』は、私の手中に収めさせて頂きましたよ」

いつもより数オクターブ低い声を出し、怪しげな印象を出す。

「か、……」

「怪盗ダイアモンド！！」

ケースの周りで警備員たちが騒ぎ出すけど、今の私にとっては程良いBGMだ。

「逃すかぁ！宝石は盗ませねーぞ！」

亜希乃パパ……須永警部が体を張って飛びついてきた。

けど、無駄無駄。

ごめんなさいね。親友のお父さんとはいえ、この場所での主役(メイン)は譲れないんだ。

「ちょっとぉ、須永警部〜！これぇ、偽物ですよ～！スピーカー付きで、リモコンで動く人形ですぅ～！！」

「しかも、人形が手に持ってるブローチまで偽物ですよ！駄菓子屋で売ってるような、安い玩具ですー！！」

「な？！」

ピンクのリボンが可愛いハーフアップの彼女と、その隣の姫カットの眼鏡っ娘の言うとおり。

そう。ケースの上に立っている『私』は、偽物。

「どこだっ！本物はっ！？」

遅い遅い。

「警部！上です！」

丸い飾りがついたヘアゴムの、低位置ツインテールの小柄な娘が指さして叫ぶ。

手にはたくさんの紐がついた風船。

予めこっそり壊しておいたステンドグラスの隙間から、そのまま外へと逃げる。

「くっそ！皆、絶対に逃すな！追え！」

「「「「「はっ」」」」」

敬礼してから警察の人が追おうとするけど、残念でした。

それもダミー。

本物の私は―――