怪盗ダイアモンド


「ふふふ。貴女の言うとおりですよ……」

全て、目の前の彼女の言うとおりだった。

「当然。TGGを舐められちゃ困るね!……っと、何でもない」

てぃーじーじー?って何だろう?

まあ、いいや。後で調べよう。

それにしても、最後の仕掛けには気付いてないみたい。

「でも、最後に勝つのは私なのですよ。残念でした」

「は?」

さっきまで凛々しかった彼女の顔が、キョトンとした顔に変わった瞬間、私はもう一つのスイッチを押した。


  ボウッ!


さっきまでブローチが入ってたケースが、燃え上がる。

それと同時にスプリンクラーが作動し、観客たちはパニックに陥った。

「何!?」

「火事だー!」

「逃げなきゃ!」

そして、私は壁に手を当てて出入口を開いた。

瞬間、なだれ込むように客が出る。

「しまっ……うわぁ!」

彼女は人混みに巻き込まれ、そのまま外へ流されていった。

それと同時に、私はリールを使って天井裏へスルスルと上がる。

「にっ……がすかよ!!」

ギリギリのところで、彼女は人混みに流されながら、かけていたゴーグル風眼鏡を外して投げてきた。

「!!」

それはシルクハットの広いツバに見事に命中する。

やばい、素顔を見られる!

私は咄嗟にかぶり直した。

見られてないといいんだけど……

「え?」

彼女が間の抜けた声を上げた。

バレたかな?!

「!?」

思わずはっと息を呑む。

だって、ゴーグル風眼鏡を外したその顔は、どう見ても―――

(……阿弓?)

携帯ゲームのやり過ぎと読書のし過ぎで悪くなったのに、どこか凛々しい目つき。

スタイルは年相応なのに実年齢より若干幼く見える顔立ち。

長年仲良くしてきた、親友の顔だった。

声をかけようと思ったけど、人混みに流されて彼女の姿は見えなくなった。


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