怪盗ダイアモンド
「さ、サイトのセキュリティが厳しくてね。そこまでは調べられなかった……ゴメン」
まぁ、そりゃそうだ。
極秘なのに公にしてたら極秘じゃない。
一つ、溜息をついたとき。
「強敵になりそうねぇ。そのTGGってやつ」
腕を組んで眉間にシワを寄せて、母さんが私の真似をするように溜息をついた。
「特に、あのパソコンで何か調べてた、小さい娘……」
「ん?母さん、なにか言った?」
「……いいえ、なにも。それより、そろそろ学校行かないといけないんじゃないかしら?今日月曜日よ?」
「わ、やっば!い、行ってきまーす!」
怪盗を始めた時に身に付けさせられた2.5秒早着替えで制服に着替えた私は、予め車の中に置いておいた鞄と菓子パンを引ったくるようにして学校へ向かった。
さーて、今からまた怪盗から女子高校生に戻らなきゃ!
「阿弓ー!蝶羽ー!おっはよー!」
―――そして、朝。学校の教室。
寝不足なのと疲れたのとで身体が重い。
なのに眩しい日差しとやたらテンションと高い亜希乃のせいで、それが倍になる。
「ねーねー蝶羽、昨日急用入っちゃって残念だったね!めっちゃ格好良かったんだよ、怪盗ダイアモンド!」
はいはい、知ってる知ってる。私だし。
つーか、本人眼の前にいるんですけど。
バレないもんだな……
「んー?阿弓、寝不足?顔が死んでるよ?」
「アホ、顔が死んでるってなんだよ!それ死に顔じゃん。私は生きてるぜ」
阿弓の顔色も悪い。
目の下にはうっすらとクマができてる。
まさか……
「……ねぇ阿弓、昨日の夜は何してたの?」
思い切って、聞いてみた。
さて、どんな反応が返ってくるか……
「え?昨日の夜?アッキーと一緒にいたよ、博物館に」
「うん!あたしとずっと一緒だったよ!」
あれ……?演技とは思えないくらい自然な返しだな。
「なーに?なんかあんの?」
阿弓が頬杖を付いて、私の目を見る。
「……いや、ちょっと聞いただけ」
……勘違いか。
それなら良かった。
「おいアゲハ嬢、何ニヤけてんの?キモいぞ?」
「ちょ、阿弓ひっど!」
いつも通りの阿弓だ。
ほんとに良かった。
敵対関係にならなくて。
ふっと、私は安堵の息を吐いた。