怪盗ダイアモンド
Ⅱ.怪盗探偵蝶羽?!
★飛翔の異変
―――あれから数日後。特に宝石の情報も舞い込んで来ず、私はまた普通の高校生活を謳歌していた。
今日は日曜日だから、兄さんと二人でソファに並んで座り、録画したバラエティ番組を見て、まったりして……たんだけど。
「兄さん?」
さっきから兄さんの様子がおかしい。
見始めた頃は一緒に爆笑してたのに、段々と静かになって、今は寝たのかと思うくらい黙ってしまった。
「どうしたの?」
ガタン!
突然、兄さんがソファから崩れ落ちるように倒れた。
「兄さん?!」
落ちた時に袖がずれて剥き出しになった手首を見ると、例の呪いが悪化していた。
手の甲の薔薇の花を中心に、蔓や葉みたいな痣を伸ばしながら広がっていく、植物みたいな呪い。
前は手の甲までだったのに、手首にまで来ていた。
「ちょっと!今の音何?!」
自室で趣味の編み物をしていたらしい母さんが、編み棒を持ったまま駆けてきた。倒れてる兄さんを見て、ハッと息を呑む。
「母さん!兄さんが……!」
「蝶羽、落ち着いて。まだ息はあるし、脈も正常よ。ちょっと呪いの進みが早くなったショックでこうなっただけだから……ちょっと待ってて!」
母さんはカーディガンのポケットからスマホを取り出し、手際よくどこかへ電話をかけた。
「もしもし……久しぶり……あ、あのね、ちょっと来てほしいの……うん、すぐに……細かいことは後で話すわ……」
話しながら、部屋を出ていく母さんを見送りながら、私はそんなに賢くない頭を働かせて、考えてみる。
相手は誰なんだろう?『久しぶり』って言ってたから、父さんなわけないし。
この呪いのことを知ってるのは、家族だけだと思ってたけど、まだ他にいたのかな。
「あげ、は……?」
「!」
ゆっくりと、兄さんが瞼を開いた。
「兄さん?!大丈夫なの?!寝てたほうが良いんじゃないの?!」
「んー……少し、頭痛え……」
小さく唸り声を出しながら、重々しくむくりと起き上がった。
「蝶羽、ちょっとお客さん来るから部屋片付けて。飛翔、あんたは起きたんだったら、歩けるんだったら布団に行って!」
通話を終えた母さん慌ただしく戻って来た。
「蝶羽、早く!」
ああぁ、はいはい、よく分かんないけど急がなきゃ!