怪盗ダイアモンド
―――ピンポーン……♪
「あ、来たわ!今行きまーす」
私が客室を掃除し終わって、兄さんが自分の部屋に入った時。玄関のチャイムが鳴った。母さんがスリッパをパタパタ言わせながら迎えに行く。
結局聞きそびれちゃったけど、母さんが呼んだのは誰なんだろう?
「お邪魔しますよ〜」
えっ。
落ち着いた声を出しながらリビングに入ってきたのは、私と同い年くらいの男の子だった。
スラリと高い身長、チョコレート色の髪、フレーム太めの眼鏡、格好良く着こなした赤紫のパーカージャケットスタイル……
め、めちゃくちゃ美少年なんですけど?!
「ん?」
光の加減で、彼の瞳が一瞬緑色に光る。
やば、見とれてたら目が合っちゃった……
猫みたいな、ほんのり緑がかった瞳に見つめられ、声が出ない。
「キミが、白鳥 蝶羽ちゃん?」
「は、はいっ?!」
うっわ、やば、声裏返った!!恥ずかしい!!
「……『アリス』か」
「は?」
ありす?私は『あげは』だけど。
「あ、いや、何でも無い。それより、君のお兄さんのほうが優先だったね。ちょっと見に行かせてもらうよ」
付いていこうとする私を、服脱がせたりして身体の状態を調べるからリビングで待ってて、と制してから、彼は鞄を持って階段を上り、兄さんの部屋へと向かった。
脱がせたり、ねぇ……アニメオタクで腐女子の阿弓が聞いたら鼻血出して喜びそうだな。
「やっぱり一時的に呪いが悪化しただけだから、ちょっと治療して暫くすれば元に戻るよ」
応急処置的な物をしたらしい。階段を下りて戻ってきた彼から、少しだけ薬品のにおいがした。
母さんが待ってたように口を開く。
「蝶羽、紹介するわ。彼は……」
「あ、空絵(そらえ)さん、大丈夫です。自分で言いますよ」
空絵ってのは、母さんの名前。フルネームは白鳥 空絵。
彼は母さんを手で制してから、長椅子に座ってた私の隣に来て視線を合わせた。……って、
うわああぁぁ!
めちゃくちゃ心臓バクバクするんだけど!綺麗な顔がすぐ隣にあるんだけど!
美男子が隣にいるってのは兄さんで慣れてると思ってたのに!
「改めて、自己紹介させてもらうね。僕は日ノ宮 音遠(ひのみや ねおん)。君と同い年の、高校三年生だよ」
そう言って、音遠くんはふわりと笑った。
首を傾けて揺れた髪から、品のいい柑橘系の香りがする。薬品のにおいを消すため、後から髪に付けたみたい。
細めた目が、猫みたい。睫毛長いな……
絵画のようなその姿に、ついつい目を奪われる。
「僕は白鳥家の遠い親戚だから、呪いのこととか、宝石のことも知ってるから。困ったら何でも聞いてね?」
ニコッと柔らかく微笑む音遠くん……
ズキューン!
胸の中の何かが撃ち抜かれるような感覚がした。
この笑顔はもはや殺人級!
や、やばい……