怪盗ダイアモンド
「どうしたの?具合悪い?」
「いいいいやいやなんでもありませんっ!!」
声がひっくり返らないようにしつつ、慌てて首を横に振った。
「アハハッ、タメ口で良いよ!同い年なんだし」
私の態度が面白かったらしい。音遠くんはケラケラと楽しそうに笑った。
芸能人も顔負けな、太陽みたいにキラキラした笑顔。
うわぁ、かっこ良い……
「じゃ、じゃぁ、タメ口で話すよ……ね、音遠くん」
「うん、そっちの方が嬉しいな。僕も、蝶羽ちゃんて呼んで良い?」
「う、うんっ!!」
こんなイケメンイケボに名前を呼ばれるとは……!!
嬉しすぎて、なんだか喉の辺りがくすぐったくなった。
(もっと色々話したいなー……)
そう思って口を開きかけた時。
♪ニャ-ニャニャ-ニャニャ-ン、ニャニャニャニャー♪
何処からか猫の鳴き声みたいな音がした。
「あ、ごめん、僕のケータイだ」
着信音を猫の鳴き声に設定する高校生男子って……音遠くんくらいなんじゃないかな。
今、そうそういないと思う。意外と可愛いところあるんだな~。
「―――もしもし?おい、大丈夫かって……え、それ本気?!……了解。すぐ行く」
誰だろう……彼女だったらちょっと残念だな。
少しだけ、胸がチクリと痛む。
何やら真剣な顔つきで通話を切ると、音遠くんは急いで膝に乗せてた鞄を肩に掛け、立ち上がった。
「蝶羽ちゃんごめん、妹から緊急の電話が来た!僕帰るね!あと、空絵さん!飛翔さんが起きたら、今後過度な運動は控えるようお伝えください!お邪魔しました!」
バタバタと嵐のように去っていく音遠くん。
あーあ。残念。もっと話したかったんだけどな。
せめて連絡先聞いとけばよかった。
長椅子の背もたれに全体重をかけ、ぐいーっと伸びをしながら、そんなことを考える。
でも、妹さんからの急ぎの用事だったら仕方ないね。
「……ん?」
一つ、気がついた。
伸びをやめて、身体をむくりと起こす。
私と音遠くんは遠い親戚。ということは、その妹とも、親戚だ。
「ねぇ、母さん。音遠くんの妹って、どんな娘?」
私は、イトコやハトコがいるけど、皆男の子ばっかり。
正月と盆に、ひいおばあちゃんの家に皆で集まる時は、話の合う子がいなくてつまんなかった。
音遠くんと私がどんな関係か分かんないけど、少しでも血縁関係のある女の子がいるってのは興味がある。
「それなんだけどねぇ―――」
母さんは自分の細い顎をつまみ、困った様に眉を下げた。
「音遠くんに妹なんて、いなかったと思うのよ」
―――え?