怪盗ダイアモンド
★音遠くんの妹
★
「音遠くんに妹はいないって……どういうこと?」
おかしいよ。
あんなに慌てて、切羽詰まったような表情で、そんな嘘つけるわけがない!
……でも、なんで母さんの言ってることと、音遠くんの言ってることは違うんだろう?
なんでこんなことが起こるんだ?
「うーん……音遠くんは、私のハトコの子供なんだけどねぇ、そんな娘いなかったと思うのよ。聞いたことないわ」
記憶を探るように、母さんはこめかみのあたりを指でグリグリと押した。
母さんのハトコの子供……遠い親戚って言っても、私と血縁関係遠すぎじゃない?
「じゃあ、その母さんのハトコ、つまり音遠くんのお母さんかお父さんに聞いてみたら?隠し子って可能性も……」
「無理よ。音遠くんの両親は、もう亡くなってるの。確認は取れないわ」
「え?!」
そうなの?!全然知らなかった。あの綺麗な笑顔からは、そんな過去があったなんて思えなかったよ!
「何年か前に仕事で海外へ行った時、テロリストに襲われたらしくてね……他の親戚も家庭の事情とか色々あって引き取れなくて、音遠くんは去年まで児童養護施設にいたの。お葬式も行えなくて、私も最近知ったんだけどね」
「へー……じゃ、今は一人暮らしなの?」
「さぁ、どうだったかしらねぇ……あ、それより蝶羽」
唐突に話題を方向転換しようとする母さん。
それよりって……これから先音遠くんと関わる上で、結構大事な事だと思うんだけど。
何やら母さんはニヨニヨと笑みを浮かべ、とんでもないことを言い放った。
「音遠くんと付き合っちゃえば?」
「ぅぐぁっ?!」
喉から変な音が出る。
な、ななな何言っちゃってんの、この人!!?
「だぁってぇ~、血縁関係ほぼ無いも同然だしぃ~?二人は同い年だしぃ~?」
ニヨニヨ笑いのまま、慌てる私を楽しそうに眺める母さん。
……娘が冷や汗かいてるのを見て笑うなんて、悪趣味!
「だからって、勝手にくっつけないでよ!」
「蝶羽もそろそろいい人見つけたら?いつまでも飛翔にベッタリしてると、出遅れて下手したら一生独身よ?」
母さんはクネクネと身体を揺らしてニヨニヨ笑いを続行する。
あの、その動きキモいんですけど。ウザいんですけど。
「それでも良いのぉ~??」
「……だ、駄目そうだったら阿弓のお兄さん紹介してもらうし!」
阿弓には六人のお兄さんがいる。誰か紹介してもらえれば、阿弓とも義理の姉妹になれるし、一石二鳥だもん!
「でも、その内の二人は既婚者だし、一人は彼女持ちでしょ?三分の一の確率じゃないの〜。それで駄目だったら本当に音遠くんしかいないわよぉ〜??」
「ゔっ……」
な、何も言い返せない……