怪盗ダイアモンド
でも、音遠くんと付き合うとか……数時間前に初めてあったばっかりだし、まだいろいろと早い気がするよ……
「蝶羽ー、母さーん」
少しふらつきながら、兄さんが部屋に入ってきた。
「あ、兄さーん!もう起きてて平気なの?」
「ん、大丈夫だよ。心配かけてごめん、びっくりしたよな、でももう大丈夫だから」
「良かったー!」
……母さんの話を遮れた事と、兄さんの体調が戻った事の、二つの意味で良かった。
これでとりあえず一安心。
私は頭突きする勢いで兄さんに抱きついた。
「うぐっ……ちょ、蝶羽、俺一応病人……」
「あ、ゴメン」
母さんにあんな事言われた反動で、うっかり力がこもっちゃった。
「おっと、そうそう。ちょっと朗報があるんだよ。さっきスマホで見たんだけど……」
「ろーほー?」
って、なんだろう?食べ物?ほうとうみたいな?
「朗報よ、ろうほう!良い知らせってこと!漢字変換しなさいよ!」
母さんがすかさずツッコミを入れる。
国語が苦手な私には、すぐに変換ができなかった。
「……話題を戻すぞ」
「あぁ、ごめん兄さん、続けて!」
「三週間後、市立美術館で絵画展が行われるんだけどね」
美術館で絵画展?
あいにく私は、アクセサリーや装飾品は好きだけど、絵は興味が無い。阿弓や亜希乃なら多少は興味あるだろうけど。
「問題なのは絵じゃなくて、額縁。飾られる絵画のうちの一つに、宝石が埋め込まれてるらしいんだよ。宝石の名前は『真夜中の名探偵(ミッドナイト・デイテクティヴ)』。大きめのオニキスだ」
「「!!」」
もしかして……
「エインセル?!」
「まだそうかどうかは分かんないけどね。俺もあんな苦しい思いは流石にしたくないし、まぁ、蝶羽の気が向いたらで良いんだけど……」
「行く!また怪盗やる!盗む!」
間髪を入れずに、私ははいはいはいはいっと挙手をして宣言する。
少しでも、一ミリでも可能性があるなら、絶対やる。
それで、絶対に兄さんを呪いから解放してあげるんだ!