怪盗ダイアモンド
「女の子っぽいデザインの手紙なんだな」
阿弓が探偵のように顎に手を添え、考え事をするポーズをとる。
そういえば、阿弓の四番目のお兄さんは探偵をやってるって聞いたけど、その真似なのかな?
「……はっ、そうか……告白って言っても、異性とは限らないんだよな……」
途端に、阿弓の瞳が怪しく光り出した。
あ、やばい。これ腐女子モードに突入しちゃったヤツだ。
阿弓は自分以外のカプならBLもNLもGLも基本的にイケるんだった……
「亜希乃、中身見せて。内容は?」
阿弓の脳内が妄想で暴走しない内に、中身を見なければ!
「え?えっとねー……」
阿弓の瞳に気付かない亜希乃は、カサカサと丁寧に中身を取り出し、私と阿弓に見えるように机の上に置いた。
本当にラブレターで間違いないか、チェックも兼ねて読み上げる。
ボールペンで書かれた、流れる様な綺麗な字。凄く読みやすいな。
「えーっと、何何〜?
『須永 亜希乃さんへ
教育実習生としてこの学校へ来てから、貴女に一目惚れしてしまいました。
どうか私とお付き合いしてくださいませんでしょうか。
良いお返事、期待してます。
瀬川 紅一(せがわ こういち)より』
……はぁ?!」
「瀬川さんって、あの瀬川さん?!」
瀬川 紅一っていうと、現在私達のクラスに来ている教育実習生。
祖父がスウェーデン人のクォーターで、ロシアからの帰国子女でもある。銀色の髪と赤紫がかった瞳が印象的な人。
誰にでも優しくて、物腰が柔らかく、うちのクラスどころか学校中の人気者。
とにかく、少女漫画から抜け出してきたみたいな超絶美形な完璧男。
その瀬川さんからの物だったとは……―――!!
「ほらぁ、だから言ったでしょー!やばーい、あたし、最大のモテ期来ちゃったかもー!!」
相手が超絶イケメンとはいえ、一人にしかモテてないならモテ期とは言わないんじゃないだろうか。
と言おうとしたけど、幸せそうな亜希乃を見てたら、何も言えなくなってしまった。
「で、OKするの?」
「えっへー、あったりまえじゃん蝶羽!このモテ期、逃す訳にはいかないよ!」
「ま、アッキーが幸せなら私はそれで良いけどよ」
阿弓は素直に拍手を送った。