怪盗ダイアモンド
まぁ何にせよ、親友に彼氏が出来た事は、私にとっても嬉しい事だ。
「よっしゃ、じゃぁ今日の放課後はアッキーのお祝いって事で、カラオケ行くか!」
阿弓が立ち上がり、青空にむかって拳を突き上げる。
「おー!行く行くー!!」
亜希乃もそれに続いて元気に飛び跳ねた。
「アゲハ嬢はどーする?飛翔さんが心配なら無理に誘わないけどさ」
「うん、大丈夫。私も参加するよ!」
兄さんの容態も良くなったし、暫く怪盗の仕事も無いし、私も快く承諾した。
阿弓と亜希乃のノリに合わせ、立ち上がろうとすると―――
「おや、寄り道されるのですか?」
端麗な顔が逆さまに覗き込んできた。
「わああぁっ?!」
「せ、瀬川さん!?」
瀬川さんだった。脚が長いから上手くしゃがめなくて、腰を折る形で私の顔を見たらしい。
「はははっ、驚かせてしまいましたか?楽しそうにお話されていたので、キリのいいところで声をかけたのですが……」
キリ、良かったかな?
あるいは、外国のジョークの一種?
「あ、そうそう須永さん、手紙の方のお返事は……」
「ふぇっ?!」
亜希乃の声がひっくり返る。
「急かすつもりはございませんが、出来ればお早めにしていただきたく」
瀬川さんの白い頬が、ほんのり紅に染まる。
「え、えええぇぇっとぉ……ちょ、ちょっと待って下さいっ!!」
亜希乃は私と阿弓の肩を持ち、強引に屋上の隅の方へ移動させた。
「なんだよアッキー!チャッチャと返事しちまえよ!このヘタレがー!」
「そうだよ亜希乃!さっきまで、へにゃへにゃ浮かれてたくせにー!」
「だ、だってー……なんかやっぱ直にイケメン見ちゃうと、ちゃんと話せないよ〜!!」
それは言えてる。うちのクラスは美形があまりいないから、亜希乃は免疫がないんだろう。
私は兄さんや音遠くんで見慣れてるし、阿弓はお兄さんやお兄さんの友達で見慣れてるけど。
亜希乃にだけそういった機会が無いから、こんな反応をするのは仕方ない事だ。
しかも外国人の血が流れてる、奇跡のような美形。緊張するのも無理ない。
後ろを振り返ると、瀬川さんは一人置いてかれ、ソワソワと返事を待っている。
「ほら、行ってこい。邪魔なようなら私らは先教室戻るから」
「え、ちょ、ちょっとー!!親友なら一緒にいてよー!!」
どこかで聞いたことのある、誰かによく似たセリフを叫びながら(※『腐女子姫と七人の王子様』参照)、亜希乃は阿弓と私に背中を押された。