怪盗ダイアモンド
「じゃぁさ、今度トリプルデートしないか?その彼氏さんに会ってみたいし」
「え?」
「うちの次男が友達から美術館のチケット貰ったって言うんだけどさ、今月中しか使えないのに六枚もあんの。
うちの両親はまだ海外にいるし、長男次男三男四男は仕事だし、五男は彼女と旅行中だし、六男は大学の研修旅行でダメだからさ〜」
阿弓が六枚のチケットを札束でも持ってるかのようにひらひらと振る。
どこから出したの、それ……
って!そのチケット、兄さんが言ってた美術館のじゃん!!このチャンス、逃せないじゃん!!
「明日は祝日で学校休みだし、ちょうど良いから行かね?」
ぐっ……、究極の二択!
この誘いを断り、自然に偵察へ行けるチャンスを逃すか、いもしない彼氏とデートに行くか!!
後者は無理。でも偵察は自然な流れで行きたい……!!
「わ、分かった。彼に予定聞いて、大丈夫そうだったら行くよ」
「よし、じゃぁ決まりね!詳しい事はまたLIKE(ライク)でな」
LIKEってのは、今流行りのSNS。
阿弓がスマホを操作するジェスチャーをする。
と、亜希乃が帰ってきた。瀬川さんも一緒だ。
いや、一緒っていうか……
「亜希乃、瀬川さん、……この短時間で何があったの?」
亜希乃は瀬川の腕に絡み付くようにくっついていたのだ。
酔ってるみたいにヘラヘラした笑顔しちゃって。本当にこれ以上ないってくらい幸せそう。
「えっへへー♡♡♡やっぱ瀬川さんて、中身も見た目も超絶カッコイイよ〜♡♡♡」
答えになってない返事をする亜希乃。
瀬川さんはニコニコと穏やかな笑みを浮かべている。
「あ、瀬川さん、よかったら明日トリプルデートしません?
聞いて、アッキー!アゲハ嬢の奴、彼氏いたんだってよ!記念にここの美術館行こうぜ!」
「マジで!あたしも蝶羽の彼氏見たい!瀬川さん、明日空いてる?」
「えぇ、空いてますよ。私も亜希乃さんのご友人方とも仲良くしたいと思っていましたので、丁度良い機会です」
「おーし、決定ー!今日は準備する為にカラオケは延期しよー!」
や、やばい、やばーい!!
どんどん後戻り出来なくなってく……
キーン、コーン、カーン、コーン―――……
昼休み終了のチャイムが鳴った。