怪盗ダイアモンド
古い怪盗紳士のポスター、天井からぶら下がってる宝石みたいなオーナメント、そして、沢山の不思議の国のアリス風の衣装や飾り。透明感のある蝶柄のカーテン。
全体を紫と黒で纏めた、魔法の部屋みたい。
「う、うわあ……!!」
「可愛いでしょう?」
母さんが、フフンと自慢気に言った。
「うん、すっごく可愛い……じゃなくて!」
自分好みのインテリアに見惚れて忘れかけてたけど、兄さんのことを教えてもらうためにここに呼ばれたんだった!
「兄さんとこの部屋と、なんの関係があるの?」
「……」
母さんは無言で、怪盗のポスターの中の一枚に触れた。
20年くらい前のものみたいだ。
写っているのは、怪盗というより、女泥棒って感じの格好をしたセクシーな若い女性。
顔は大きな眼帯で半分隠れてるけど、かなりの美人。膝まで届きそうな黒髪にラベンダーグレイのメッシュを入れてる。胸はサラシを巻いているが、それでも結構大きく、スタイルも良い。
雰囲気が峰●二子に少し似てる気がする。
「ここに写ってる、『怪盗ルビー』って聞いたことあるかしら?」
「あ、ちょっとだけ聞いたことある」
警部の父をもつ亜希乃が、二十二年前に世間を騒がせた怪盗ルビーは変装名人で、盗めなかった宝は無いと言われていた、と言ってた。
そうか、この人が怪盗ルビーなのか。
「それが、私なの」
「……は?」
「私が、元怪盗ルビーなのよ。もうとっくに引退したけどね」
「―――ええええええええええええええええええぇ?!!?!」
「私だけじゃないわ。父さんは『怪盗サファイア』をやってたし、お爺ちゃんは「怪盗トパーズ」、お婆ちゃんは「怪盗エメラルド」をやってたの」
ポスターを指さしながら淡々と説明する母さん。
全部、私も既に知ってるくらい有名な怪盗ばかりだ。
「……?!」
びっくりし過ぎて声が出ない。
私んちって、怪盗一家だったの……!?
怪盗って物を盗むから、犯罪者だよね?犯罪者一家でもあるの?
改めて母さんをよく見ると、どことなく怪盗ルビーの面影があった。
母さんはけっこう整った顔をしてるし、歳の割に胸も大きくスタイルも良い方だ。
写真と違って、今は髪にふわふわのパーマをかけたコーヒー色のショートヘアになってるけど。
「うちの家系は昔、呪いを受けていて、大体一家に一人、二十歳くらいになると、呪いが発動するの」
「呪い?!」
今度は何!?怪盗の話だけでも混乱してるのに、いきなりオカルト話に飛ぶの!?
「飛翔のアレは呪いが発動する前兆なのよ」
「!!」