怪盗ダイアモンド
★不思議な双子と見惚れる猫
★
そして、当日。
晴天にも恵まれ、雲一つ無い程よく暖かい日。
「「……」」
約束した時間に、集合場所である美術館前のオブジェの元に集まった皆。
めいっぱいのオシャレをした亜希乃、その亜希乃と手を恋人繋ぎしてる瀬川さん、今日だけ偽彼氏の音遠くん、そしてこの私・蝶羽と、ムスッとした顔の阿弓と……
「はっじめまして〜☆阿弓の一番上のお兄ちゃん、榊家長男の榊 颯馬(さかき そうま)でっす☆いつも妹がお世話ンなってまーす!!」
何故か、阿弓の彼氏の代わりに、彼女のお兄さんが来ていた。
美術館の雰囲気には合わなそうなラフなスポーツウェアで、阿弓の肩を組んでヘラヘラとピースサインを送っている。
阿弓から十歳年上の二十八歳で、既婚者って聞いてたけど、茶目っ気たっぷりでもっと若く見える。ノリが男子高校生みたいだ。
こんな感じの人、うちの学校にもいる。あんまり年上って感じがしない……
「えっと……阿弓、何でお兄さん連れてきたの?仕事って言ってなかった?彼氏くんは?」
私が全員を代表して尋ねたけど、地雷踏んだみたい。
阿弓は颯馬さんの腕を振り払い、爆発した様に拳を握り締めて嘆いた。
「颯馬兄さんは仕事が急に休みになったんだとよー!!で、逆にアイツは仕事が急に入ったとかで今朝飛行機でカナダまで行っちゃったんだよー!!だからこいつが『そんなら俺といこーぜ☆』って言うのー!!もー!!なんなんだよアイツ!!あのアホ!!!クズ!!!肥溜めん中に頭から突っ込んで窒息死しろー!!!」
あー……
そう言えば、詳しくは知らないけど、阿弓の彼氏はよく海外を飛び回ってる人だった。
前にも言ったと思うけど、阿弓は現在遠距離恋愛中。
だから、寂しいのとなかなか会えない怒りが、彼女を不機嫌にさせてるんだろう。
なんだ。わざわざ音遠くんを連れてくる必要なかったな。私も同じ手を使えばや良かったかも。
それにしても、彼氏に対してこの言い方は酷い……肥溜めに頭から突っ込んで窒息死とか、えげつないよ。阿弓。
「い〜じゃん、彼氏くんがいなくたって、俺がいるんだし☆」
「私は海馬(かいま)兄貴か椎馬(しいま)兄者と行きたかったんだけど」
「連れねぇなァ。たまには俺にも構ってよー?お兄ちゃん、寂しー(´•ω•`)」
「モト義姉(ねえ)がいるじゃん!」
「モトちゃんは友達と女子旅行っちゃったんだよ〜……」
ちなみに、モト義姉っていうのは颯馬さんの奥さん。つまり阿弓の義理のお姉さんだ。
どうやらこの兄妹の愛は、うちとは逆で兄の一方通行みたい。