怪盗ダイアモンド
「……ヒノミヤ?」
一人だけ、阿弓が怪訝そうな顔をする。
けどそれは一瞬で、すぐに笑顔を作って挨拶をした。
「ねぇ、音遠くんって言ったね。君、妹はいる?」
「え?妹?」
あ。
『蝶羽ちゃんごめん、妹から緊急の電話が来た!僕帰るね!』
妹という単語で、あの時の言葉が頭の中でフラッシュバックする。
今まで忘れかけてたけど、ちょっとまた気になり始めた。
阿弓に心当たりがあるなら、本当にいるのかな……
「いや、私の知り合いにも『ヒノミヤ』って苗字の人がいるから、兄妹か何かかなって」
『ヒノミヤ』ってあんまりいない苗字だと思うけど……
「多分、たまたま同じ苗字の人だと思うよ?
. . . . . . . . . . . .
僕にきょうだいはいないし」
「え?」
嘘。
じゃ、あの時の発言は何?
「そっか。まあそんな偶然なんてそうそう無いよね!私は榊 阿弓。今日はよろしくー」
「よろしくね」
顔を上げた音遠くんと、視線が合った。
「今日は楽しめそうだね、このメンバーなら。呼んでくれてありがと」
ニッコリと微笑む音遠くん。私と初めて会った時の笑顔と、同じ顔……なのに。
なんとなく、背後に黒い影が迫ってるように見えて、私はうまく笑えなかった。