怪盗ダイアモンド
私が盗ろうとしていた絵が無くなっていた。
その上……
「ま、また怪盗ダイアモンドが出たぞー!!」
絵画があった場所には、母さんお手製の、さっき音遠くんが置いてきた『怪盗ダイアモンド』の予告状が貼ってあったのだ。
「え?」
「何?」
「怪盗?!」
「嘘?!」
え?
どういう事?
私は何もしてないのに!!
「蝶羽ちゃん!こっち!」
音遠くんにまた引っ張られ、奥の方にいた阿弓達と合流した。
見慣れたメンツと一緒だと、少し安心する。
「さっき絵画が無くなった場所、僕達が一番近かったからね。ヘタしたら疑われるよ。皆といた方がいいよ」
なるほど。短時間でここまで考えるとは……音遠くんは賢いなぁ。
「確かに君達が一番怪しまれるかもね……でも、すぐ逃げたら逆にヤバいんじゃね?」
こんな状況にも関わらず、颯馬さんは呑気に頭の後ろで手を組んだ。
「颯馬兄さん……何でだよ?二人がそんな事する訳ないんだから、こっちに来たって問題は……」
「二人の鞄だよ、よく見ろ」
「「……あ」」
亜希乃と阿弓が、事態に気がついたようだ。
私が腕に掛けてるのは、大きめの鞄。
いつも阿弓が怪我したり、亜希乃が忘れ物したりするから、色んなものを入れる為に大きめのものにしてるんだ。
音遠くんが背負ってるのは、男の子らしいごつめのリュック。
チャック部分に付いた猫のストラップが可愛い。
どっちも、絵画がちょうど入りそうだった大きさだった。