怪盗ダイアモンド
……もしかして、ヤバい?
今は高校生の犯罪が少なくない時代だし、疑われるポイントもある。
音遠くんと私は今、カップルのフリをしてる訳だから、お互いの無実を証明したとしても、口裏を合わせてると思われるかも……
っていうか、私本物の『怪盗ダイアモンド』だし!!
立派な犯罪者だし、音遠くんも共犯みたいなものだし!!
思わず音遠くんと顔を見合わせる。
「で、でも、盗ってないんでしょ、蝶羽も音遠くんも!それが一番の証拠なんだから、ビクビクする必要は―――」
「すみません、お嬢さん、お兄さん」
亜希乃の言葉が途中なのに、誰かが私と音遠くんの肩を掴んだ。
……心なしか、力が篭ってて痛い。
音遠くんも同じみたいで、端麗な顔を歪ませてる。
「そこの女性が、君達が絵画の前にいたと言ってるんですけど……どういう事ですかな?」
振り返ると、初老のオジサマが私と音遠くんを睨んでいた。
いや、オジサマだけじゃない。
オジサマの隣にいる金髪碧眼の低身長の女性も、美術館に来てたお客さんたちが私達を疑いの目で見てる。
え、何、全員私達を疑ってるの?!
「待って待って〜、この子達まだ高校生ですよ?それだけで疑うって、いい大人としてどうなんすか?」
颯馬さんが割り込むように庇った。
途端に皆は、周りを見回して困った表情になる。
た、助かった……やっぱり、ヘラヘラしてても二十八歳の大人。こういう時は頼りになるわ……
「二人共、鞄の中身全部ひっくり返して見せて」
颯馬さんに言われた通り、私と音遠くんは鞄の中身を全部出して空にする。
私は、財布と、絆創膏や消毒液や目薬のセットを入れたポーチ、スマホ、ガムと飴。
音遠くんは、財布、文庫本、ビタミン剤みたいな薬がたくさん、小さい猫のぬいぐるみ、スマホ、小型のゲーム機。
誰がどう見ても普通の高校生らしい中身だ。
「ほら、何も無い。第一、高校生が絵画を盗む理由がないでしょ。怪しいってだけで疑うなんて、恥を知って欲しいっスね」
さすが教師。説得力がある。
助かった……