怪盗ダイアモンド
「でも、実際絵画は無くなってるし、『怪盗ダイアモンド』って怪盗を名乗るくらいなんだから変装とか得意なんじゃないの?」
金髪碧眼の女性がしつこく疑う。
「……分かりました。そこまで言うのでしたら……」
音遠くんが女性の前に立つ。
音遠くんはモデル並みに背が高いし、相手の女性は背が低めだから、必然的に上から目線になってる。
二人は少しの間睨み合う。バチバチと火花が飛びそうな空気……
何これ、この二人相性悪いのかな……
音遠くんは女性の態度が気に入らないのか、珍しく吐き捨てる様に言い放った。
「僕らが真犯人を見つけ出します。勿論、証拠も全て。それなら文句ないでしょう?」
え?
「あはッ、良いわねぇ!リアル高校生探偵?面白い!」
女性は鈴を転がしたような声で嗤うと、折れそうな細い指で音遠くんを指した。
「別の大きな事件を追っかけてるみたいで警察はまだ来ないし、長時間こうやってグダグダしてても絵画をどこかに持っていったり、犯人が逃げる可能性もある。
だから真犯人を探すとしたら、そうねぇ……三十分程ってとこかしら。軽率に探偵ゴッコしようとしてるけど……出来るの?」
「貴女が僕らを疑う限り、やりますよ」
待って待って待って待って待って待って待って!!!!!!!!
私は今回何度目かの『待って』を心の中で絶叫する。
何勝手に話進めてるの?!
今日どうしちゃったの、音遠くん?!
「うふふ、楽しみにしてるわ。最初に言っとくけど、見ての通り私と彼は違うからね」
両手を広げる女性が持ってるのは、黒のクラッチバッグ。
彼と呼ばれたオジサマは、小さいショルダーバッグ。
確かに絵画が入る大きさじゃない。
「なんか面白そうだな」
「最近の若者は……」
「でも漫画みたいでワクワクするわ〜」
「彼氏の方は頭良さそうだし」