怪盗ダイアモンド
―――兄さん。
頭の中に兄さんの姿を浮かべる。
白鳥 飛翔(しらとり ひしょう)、二十三歳。つまり私の五つ年上。
私が最も尊敬していて、私の知ってる男性の中で一番格好良い人。
いつも私がピンチになると、助けてくれた。
小学生の時に、怖い犬に噛み付かれそうだったときも守ってくれたし、いじめっ子に叩かれそうになったときも、逆に相手をこてんぱんにやっつけてくれた。
中学生の時に、受験勉強がうまくいかなくて不安になったときも落ち着かせてくれたし、友達と喧嘩したときも、仲直りのアドバイスをくれた。
私はそんな兄さんに憧れてて、今もあんな人間になりたいって思ってる。
(ちょっと誰、ブラコンって言ったの!全然そんなんじゃないから!!)
次は、私が兄さんを助ける番なんだ―――
やっぱり、兄さんが呪いなんかで死んじゃうのは嫌だ。
怪盗になるより、ずっと嫌。
私は覚悟を決め、立ち上がった。
「わかった。私、五代目の怪盗として、頑張るよ!」
「そう来なくっちゃ!」
踊るような足取りで、母さんは天井からぶら下がってるオーナメントの一つを軽く引っ張った。
カタン カタタタタ…
「うわっ?!」
天井から、ハンガーにかかった衣装や帽子がたくさん下りてきた。
……どーなってんの、私ん家!?
ああ、もう驚く気にもなれない。
衣装をよく見ると、フリルがたくさんついたもの、小さな妖精の羽根がついたもの、ゴスロリっぽいドレスやら着物風のやら民族衣装風のやらがいっぱい……誰がこんなに用意したんだろう。
「この中から、好きなの選んでね♪」
あ、衣装は怪盗●ッドみたいに受け継いだりするんじゃなくて、毎回新しいものを着るのね。
家族だってバレる恐れもあるからか。
なのに怪盗の名前は宝石名で統一するんだ……変なの。
「どーしよっかな~」