怪盗ダイアモンド

★名探偵アゲハと助手ネオン




「え?皆にアリバイがある?」

「うん、あたし達以外の人達は、ほとんど誰かと一緒に行動してて、それを見てる人も多くて、ちゃんとその、ありばい?っていうの?があるよ」

「ほとんど?皆じゃないの?」

「一人で行動してて証人がいないのは、真砂さんだけだね。でも、あの人右脚悪くしてるらしいからなぁ……」

そういえば、私の肩掴んだ時、やけに体重がかかってた気がする。

そんな状態じゃ絵は持ってけないか……

あ〜、もう!阿弓とイレーネさんはいつの間にかどっか行っちゃうし、音遠くんはなんか機嫌悪いし、颯馬さんは誰かと通話中だし!

お馬鹿な亜希乃相手だと、推理があんまり進まないし……

うぅ、薬で小さくなった眼鏡の小学生探偵とか、シルクハット被った英国紳士が来てくれれば、スピード解決するのに……

「落ち着いてください。推理には脳を働かせる糖分が必要かと思われます。砂糖をたくさん入れたミルクティーを用意致しました。皆さんも如何です?」

館長さんがトレーにティーカップをたくさん乗せて来た。

美術館の雰囲気にピッタリなデザインのティーカップから、ほわほわと湯気が立ってる。

「勝手に動かれたくないんですけど……」

渋々ながらも素直にティーカップに手を伸ばす音遠くん。

他の人も緊張していたのか、続いて手を伸ばしていく。

「私も頂こうかしら」

「あ、私もー」

いつの間にか戻ってきてたイレーネさんと阿弓もカップを受け取る。

そういえば、私も喉乾いちゃったな。

「はい、探偵さん☆」

「あ、颯馬さん……ありがとうございます」

手を伸ばす前に、ニコニコ顔の颯馬さんが、私にティーカップを手渡した。

「あ゛いでっ!」

「ひゃっ」


パシャッ


ミルクティーが床に零れ、私の分が半分無くなってしまった。

「っあー、ごめん!!減っちゃった方は俺が飲むから!蝶羽ちゃんはこっちどーぞ!」

「あ、ありがとうございます……すみません、私がちゃんと受け取らなかったから!」

「いや、違う違う。俺がちょっと昔やらかした傷が痛んじゃっただけ。蝶羽ちゃんは悪くないよ、平気だよ~」

颯馬さんが軽く袖を捲ると、切り傷みたいな痕が腕にあった。古傷が疼くってやつ?

「お洋服は……濡れてませんね、今布巾をお持ちします」

「あれ?瀬川さんと館長さんは飲まないんですかー?」

トレーに瀬川兄弟の分のティーカップが無いのに気づいた亜希乃が問う。

「私は淹れているときに飲んでしまったので、大丈夫です」

「私も先ほど持っていた麦茶を飲んだので大丈夫ですよ」

二人同時に答えた。

さすが双子。息ピッタリ。

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