怪盗ダイアモンド
「え?もう犯人分かったの?早くね?!」
推理を始めると全員に告げた時、一番最初に驚いたのは阿弓だった。
「蝶羽大丈夫?間違ってたら超失礼だよ?取り返しつかないよ?」
「大丈夫、自信あるから。亜希乃は黙って聞いてて」
そう言えば……昔阿弓が貸してくれた本には『名探偵の鉄則』っていうのがあった。
推理を披露する探偵は大体、容疑者の周りをゆっくり回るらしい。
私もそれに従い、ブーツの踵を鳴らしながら歩いた。
さて、どこから話そうかな……絵画の場所が先かな。
いや、それより。
「ここに来た時に貰ったパンフレットなんですけど……館長さん、これはどういう事で?」
「はい、これ、というのは……?」
私はポケットに折り畳んで入れてたパンフレットの隅を見せる。
館長からの一言のコーナー。
『志鐘(ししょう)市立仙花(せんか)美術館館長:田鹿 市丸(たじか いちまる)』
横には、頭皮が寂しくなっているおじさんが笑顔で写ってる。
これは、ついさっき音遠くんが見つけたもの。
私がごちゃごちゃ考えてたりしてる間に、色々行動してくれたみたい。
拍手を送りたいくらい頭の切れる『助手』だ。
「これ、どう見ても貴方じゃありませんよね?」
「……つい最近、私が跡を継いだんです。パンフレットは古いものでして」
「そうですか。それではこれは?」
私は館長さんの手をガシッと掴む。
ギリシャ彫刻の様な、白くて細長い指。
「手袋はどうされたんです?美術館館長の必需品ですよね?」
「あぁ、さっき紅茶を淹れた時に一旦外してそのままでした……蝶羽さん、どうしました?私をお疑いで?」
「いいえ、一応確認ですよ。念の為」
すました顔のまま、私は亜希乃の前に立つ。