怪盗ダイアモンド
阿弓が長い指で示した。
チラシの真ん中に、大きなルビーが埋め込まれたブローチが記載されている。
金でできた女神らしき女性の飾りが、ルビーを抱きかかえているようなデザイン。
溜息が出るくらい美しいものだった。
「三人で行きたいけど、すげー混みそうなんだよね~、どーしよ……」
「あ、じゃあ私のダディに頼む?」
「ダディって、アッキーのパパさん?」
亜希乃のお父さんは、前にも言ったとおり、T県警捜査二課の警部さん。
「うん、そこの警備頼まれてるらしいから、頼めば多分オープン前にちょっと見せてくれるんじゃないかな」
「おお!!じゃ、入場は亜希乃パパにお願いするか!で、いつ行く?」
「月曜オープンだから、前日の日曜日なら行きやすいんじゃない?あ、でも私は部活あるから行くとしたら午後だ」
私が提案する。
もしあれがエインセルで、盗むことになるとしたら、日曜日の方がゆっくり偵察できる。平日の放課後じゃ課題やら部活やらで忙しいし。
「私も日曜日の方がいいな。午後開いてるし。アッキーは日曜日の午後で大丈夫?」
「うん、あたしは部活無いから、何時でも空いてるよ〜」
「じゃあ、日曜日の午後二時あたりに現地集合。細かい事はラインで連絡し合うってことでOK?」
「「オッケー!」」
「First mission(最初の試練)ね。」
家に帰ってすぐに母さんに『血の口紅(ブラッドルージュ)』の事を話すと、もう既にニュースを見て知っていたらしく、母さんは言った。
隣でぐったりしてる兄さんに薬を渡したあと、一気に捲し立てた。
「盗むのは今週一週間の内の、新月の日!防犯装置、警備員の数、逃げ道、目くらましになるスプリンクラーとか消火器の位置、姿を現すのに最適な人が集まりそうな場所、全部チェックするように!失敗は許されないんだからね!」
「は、はい……」
いつになく真剣。
確かに、これが本物でもし盗れなかったら兄さんは恐らく死ぬ。
ぐっと膝に乗せた拳を強く握る。
頑張らなきゃ……!!