君と花を愛でながら


「嘘ですよ、からかってばっかり」



ほんとお願いだからやめてください、と念を込めてじっと睨んでいると、片山さんがうなだれたまま眼だけを上向けて苦笑いをした。



「綾ちゃんこそ、わざとやってる?」

「え……」

「わざと、わかってないふりしてる?」



まっすぐに見つめ返されて、どくんと胸が高鳴った。


別に、わからないふりをしてるわけじゃない。
ただ、あの言葉を本当は、もっと深く考えるべきなんじゃないかって……そう思うのが、怖いだけで。


返事もできず黙り込んでしまったけど、片山さんは私の表情で何かを読み取ったらしい。



「まあ、いいけどね。丸きり信頼されるよりは、そうやって意識される方がマシ」

「別に意識なんかしてません」

「そう?」



片山さんは、どこまでも自信に溢れた目をしていた。

< 101 / 277 >

この作品をシェア

pagetop