君と花を愛でながら



「いえっ、大丈夫です! マスター、お食事行ってください!」



慌てて笑顔でそう言ったけれど、わざとらしく取り繕ったように見えてしまったのかもしれない。


無言で、珈琲を淹れてくれるのを見て、『あ、私の分だ』と、すぐにわかった。
案の定、暫くカウンターで立ってグラスを磨いたりしていると作業台にカップを置き「どうぞ」と一言。



「……ありがとうございます」



一瀬さんの感情の読み取りにくい表情を、最初はすごく怖いと思ったけれど。
今は逆に、安心してしまう。


厨房へと入っていく背中を目で追いながら、私は珈琲の香りを深く吸い込み唇をつけた。

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