君と花を愛でながら
外灯や店の灯りを反射して、色とりどりの光を放つ石畳道を進んで行くとそれほど長くかからずに駅につく。
まだ人通りも多い時間で、ほんとに送ってもらうほどのことでもないのだけど。話上手な片山さんに乗せられたというべきだろうか。
最初の緊張やら戸惑いやらはいつのまにかなくなって、話に夢中で歩調も緩くなる。
「綾ちゃんは映画はあまり見ないの?」
「最近はあまり。レンタルしてくることはよくありますけど」
「じゃあ遊びに行くならどこ行きたい?」
「あ、植物園がこないだリニューアルされてそこに今度行く予定なんですけど」
「え、誰と?」
「お姉ちゃんとです!」
「ふうん……」
ずっと笑顔だった片山さんが、少し面白く無さそうな顔をした。
「『悠くん』は一緒じゃないんだ?」
「えっ、どうかな、聞いてないですけど……」
話をしたときは私とお姉ちゃんだけだったけど、いざ行くと悠くんも一緒だったりもよくあることだから、本当にその日になってみないとわからない。
片山さんの不機嫌の理由は、わからないことはないけれど。
それが、ほんとなのかただからかってるのかがわからない。
以前は頼りにできる先輩で、男の人だなんて特に改めて思ったことはなかったけど……こういう会話になると、つい考えてしまう。
早く、駅に着かないかな、なんて。
「じゃあ、さ」
「はい?」
突然互いの手が触れあって、片山さんの手は少し、ひんやりとしていた。