君と花を愛でながら

「わかんないこととか、何したらいいか、とか、ちゃんと口に出して聞けばいいよ。男ばっかで聞きづらいかもしれないけど」



心中は隠してできるだけ優しく笑うと、「ありがとうございます」と言った彼女の瞳がまたじわりと潤んだ。


いやいや。
働くなら当たり前のことだから。


こりゃ使い物にならんかな。
そう思ったけど、彼女は案外、言われたことは素直になんでも吸収するから覚えるのは早かった。


彼女の見方が変わるまでほんの数日あれば十分。
どんくさく見えるのは、言葉を発するきっかけに躊躇する少し臆病なところがあるからで。


店の雰囲気に慣れてくれば、徐々に自分からもちゃんと聞けるようになった。




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