君と花を愛でながら
「だって、悠くんはほんとに」
「違うって言える? 幼馴染としてしか接してないのに」
「そっ……」
言ってしまってから、はっと我に返る。
目の前には、明らかに傷ついて表情を固めた綾ちゃんの顔。
今にも泣きだしそうに見えて、激しい罪悪感が押し寄せた。
何やってんだ、傷つけたあの「悠くん」とやらに腹を立ててたはずなのに、俺が傷つけてどうするんだ。
「……悪い、意地悪言うつもりじゃなかったんだよ。ただ、あんまり感情移入したら綾ちゃんがしんどいだろうって」
「いいえ、本当のことだし」
「余計なこと言った、ごめん」
慌てて謝って頭を下げて、彼女は少し頬を引き攣らせたままだったけれど。
「大丈夫ですよ、ほんとのことだし」
「ごめんって」
じきにほんとに笑顔になって、柔らかく首を振る。
今傷つけたのは俺なのに
なんだか。
そんな表情を見ていたら、何故だかもう
たまらなくなって
「……まだ、『悠くん』のことが好きだったりすんの?」
気付いたら、そんなことを口にしていた。