君と花を愛でながら


「好きですけど……恋とはもう、違うような気がします」



思案顔で、俯いたままの彼女にそっと近づく。



「自分でも、よくわからないですけど。
 悠くんの顔を見ても、もう割とへっちゃらだし」



笑ってそう言った彼女に、落胆した。


いつの間にか詰められていた距離に、彼女が驚いて瞠目する。
固まってただ瞬きをするしかない姿が、可愛らしくて仕方なくて。



「……だったら、いいけど」



心配する素振りをしながら、彼女に触れる口実ばかりを探していた。


例えば泣いてくれたなら、抱きしめることができたのに。



「静さんに感情移入しすぎて
 失恋の傷も癒えてないだろうにって思ったら……心配で」



心配だけど。
今度こそ傷ついたら、俺が慰める理由になるかな。


そんな風にずるいことばかり考えながら
半ば無意識で手を伸ばす。


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