君と花を愛でながら

見つめるほどに気づいたのは、綾ちゃんの視線の先で。
困った時、褒めて欲しい時、相談したい時、失敗した時。


必ずそこにマスターがいる。
綾ちゃんがマスターを慕ってることには気づいていたけど、それは多分上司というか自分を雇ってくれた人に向ける感謝だとか尊敬の類だとそう思うようにしていた。


だってそうだろ。
どう考えたって恋愛初心者の綾ちゃんに、マスターって。


一回り以上も年上で、過去に婚約歴まである男選ばなくたってさ。


マスターも、俺が綾ちゃんに言い寄っても別に気にする素振りも見せなかったけれど。


俺が漸く、綾ちゃんを向日葵畑に誘うところまでこじつけたっていうのに。



「向日葵。梅雨が長引いたせいで開花が遅れているそうですよ」



まるで、戸惑う綾ちゃんを助けるような発言をした。
マスターが何を考えてるのかさっぱり読めね。


それは俺が綾ちゃん絡みで意識しすぎて、考えすぎてるだけなんだろうか。

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