君と花を愛でながら
暫くの間、返事を保留されたままの状態で。
俺としてはすごく面白くないんだけど、まあそれで諦める気もないから。
返事をしてない後ろめたさからか、少し遠慮がちな綾ちゃんの態度が可哀想になって、何もなかった顔で接していたらやがて安心して元の空気に戻っていった。
今はそれでいいけどね。
ちゃんと向日葵が見頃になったらもう一回誘わせてもらうし。
「これ、片山さんのですか?」
店の外回りの掃き掃除をしていた綾ちゃんが戻ってきて、俺に手の中の物を差し出した。
厨房の裏口付近に、落ちていたらしい、それ。
銀色の円柱の形をした、携帯灰皿。
「携帯灰皿って、こんなお洒落なんですね。知らなかった」
言いながら、返事も聞かずに俺に差し出した。