君と花を愛でながら
「ええ、今朝落としていたみたいで」

「意外だったらしいね。綾ちゃん驚いてた」

「隠してるわけでもないんですけどね。仕事中はラストにしか吸わないので」



イメージを壊してしまったでしょうか。
と言う割には、別に動じた様子もなく指に挟んだ煙草を口に運んだ。



「……綾ちゃん、何か言ってた?」



煙草よりも何よりも
俺が漏らした余計なことが彼女にどういう影響をもたらしただろうか。


それが気になって、つい尋ねるが。



「何か、とは?」

「いや……例えば。ショックだった、とか」

「……私が煙草を吸ってなぜ綾さんがショックを受けるんですか」



訝し気に眉を寄せられ、真向から聞けない俺は。



「……そりゃそうなんだけどさ。綾ちゃんマスターを神聖視してっから」

「それは……光栄ですけどね」



結局肝心なところは誤魔化したまま、彼女の様子はわからずじまい。


マスターが、ふ、と口角を上げた唇の端から紫煙が白く上る。
そのまま細く長く煙を吐き出しながら、煙を目で追い上向く横顔。


それを見ていて不意に、思い出した。
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